お知らせ

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【研究費増額支援】海外共同研究による電気生理学的解析技術の習得 ― 英国オックスフォード大学におけるイオンチャネル研究 ―

本事業の研究費増額支援を受け、医学研究科博士課程の工藤 亘さんが、2025年10月29日~11月28日にイギリス・オックスフォードへ渡航し、研究インターンシップを実施しました。

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報告者:工藤 亘
所属研究科・専攻:医学研究科生体機能構造医学専攻
実施した活動の名称:専門知識や研究技術の習得を目的とした海外研究機関でのインターンシップ
実施期間:2025年10月29日~2025年11月28日
実施場所・機関名:イギリス(オックスフォード)・オックスフォード大学薬理学研究所
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SPRING事業の研究費増額支援を受け、約1か月間、オックスフォード大学薬理学研究所のPaolo Tammaro教授の研究室に滞在し、パッチクランプ法の実験技術およびイオンチャネルに関する知識の習得に取り組んだ。

滞在期間中は一貫して、パッチクランプ法を用いたCa2+活性化Cl⁻チャネルTMEM16Aの電流測定を行った。まず、TMEM16Aを導入したHEK293T細胞を用い、ホールセルパッチクランプ法により全細胞電流を記録し、阻害剤Ani9および活性化剤PAM_16Aがチャネル電流に与える影響を評価した。

続いて、マウスの大動脈および頸動脈から血管を摘出し、酵素処理によって平滑筋細胞を単離したうえで、同様に全細胞電流の測定および薬剤投与を行い、細胞種ごとのTMEM16A電流の大きさや薬剤応答の違いについて比較検討を行った。

また、自身の研究内容についてプレゼンテーションを行い、教授および研究員とのディスカッションを通じて有意義な意見交換を行うことができた。


■ 本活動で得られた成果

本研究室訪問では、所属研究室でも日常的に行っているパッチクランプ法を用いたイオンチャネル電流の計測実験に主に取り組んだ。所属研究室においては、電気生理学を専門とする指導教員のもとで、データの解釈や考察に関する指導は日頃から受けている。一方で、パッチクランプ法そのものを専門とするのは自身のみであったため、これまで十分に受ける機会のなかった実験手技に関する専門的な指導を受けることができた。その結果、実験操作の精度や再現性の向上といった点で、自身の技術的成長を実感することができた。

また、これまで扱う機会の少なかった培養細胞(HEK293T細胞)を用いた実験にも取り組み、細胞培養の基本操作に加え、細胞へのイオンチャネル導入といった手技を新たに習得することができた。


■ 研究者としての成長

研究力の向上という点では、前述のとおりパッチクランプ法に関する専門的な技術指導を受けることができたことに加え、これまで経験のなかった培養細胞を用いた実験に取り組めたことが特に大きな成果であったと感じている。

また、本研究室訪問を通じて、自身の進路に対する視野が大きく広がった。これまで海外渡航の経験がなく、海外で生活することに対して漠然とした不安を感じていたが、約1か月間の滞在を通じてそのような不安は払拭された。

その結果、今後の研究者としてのキャリアの選択肢の一つとして、海外での研究活動も前向きに検討したいと考えるようになった。


■ 今後の課題と展望

本研究室訪問を通じて最も強く認識した課題は語学力である。自身の英語力の不足により、教授や他の研究者とのコミュニケーションが十分に図れない場面があったと感じている。

また、英語力がより高ければ、研究内容についてさらに踏み込んだ議論が可能となり、自身の理解や知識を一層深めることができたのではないかとも感じている。

今後、研究者として活躍していくうえで、英語による発信力・議論力の向上は重要な課題であり、継続的に取り組んでいきたい。


■ 活動全体を通して

本活動を通じて、普段とは異なる研究環境に身を置き、これまで経験のなかった実験手法や研究テーマに触れることで、多くの学びを得ることができた。

一方で、海外の研究室であっても、研究に対する基本的な考え方や価値観に大きな違いはなく、言語の違いを除けば、研究活動そのものに特別な隔たりはないことを実感した。これは否定的な意味ではなく、今後海外で研究を行うキャリアを考えるうえで、「海外だから」と必要以上に不安を感じたり、過度に構えたりする必要はないと感じられた点で、大きな収穫であった。


本事業では今後も、博士(後期)課程学生が国際的な研究環境に挑戦し、世界水準の研究力を養う機会を積極的に支援してまいります。


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